01.遺言がある場合・ない場合

死後に自分の意思を実現する

 人は、生前に法律行為(※)によって自己の法律関係を自由に形成することができます(法律行為自由の原則)。さらに人は、自己の死後の法律関係をも定めることができます。
 
この、意思表示の効力を自分の死後に生じさせる法律行為を、「遺言」といいます。具体的には、自分の財産を死後どう処分するのか等について、生前の考えを表すことです。遺言が書かれた文書が「遺言書」です。
 
民法は、私有財産権を実質的に保証するために、遺言制度を設けることによって、財産処分などの自分の意思を実現する自由を、死後にまで認めているのです(遺言自由の原則)。

(※) 法律行為とは、「一個または数個の意思表示を要素とし、意思表示に対応する
  私権の変動という法律効果を生じさせる法律要件」と定義されます。
   
具体的には、抵当権の設定行為や所有権の移転の合意など物権的な効果を生じ
  させる行為(民法176条)、贈与(549条)・売買(555条)などの契約の他、
  相殺(506条1項)や契約の解除(540条1項)など、債権的な効果を生じさせる
  行為、婚姻その他の身分的効果を生じさせる行為(742条1項)、遺言など相続
  上の効果を生じさせる行為(902・908条)など、様々な行為が法律行為に分類さ
  れます。


遺言の利点

 遺言書を作成しておく利点には、以下のようなものがあります。

・全部または個々の財産を誰にあげるのかについて、自分の考えを反映させることが
 できる

・相続人以外の方に自分の財産をあげることができる
・遺言書にどの財産を誰に相続させるかを記載することによって、相続財産を取得す
 る人は、遺言書だけで、不動産名義の変更・預貯金の払戻などができる(手続の
 簡易化)

・遺言書で遺言執行者を指定することにより、これらの手続を任せることができる

 このように、遺言には、相続に関する様々な手続きについて遺族の負担を軽減するという利点があります。


遺言がない場合

 遺言がない場合、相続人間で遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)をすることになります。相続人の間で話し合いがつかない場合には、家庭裁判所の遺産分割の調停または審判の手続を利用することができます。

 遺産分割協議がまとまったとしても、それを実行するためには、遺産分割協議書にすべての相続人が実印で捺印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
 相続関係が複雑な場合、誰が相続人なのか、どこに住んでいるかなどについて戸籍を調査するのが大変な場合があります。遠く離れた相続人と協議するのが難しい場合もあります。
 相続人の中に認知症の方や行方不明の方がいる場合、遺産分割協議をするには、後見人や不在者財産管理人を選任する必要がありますが、その選任にも時間がかかります。

 以上のような面倒な手続を省略するためには、遺言は有効です。遺言がないばかりに、相続人の間で争いがないのに、手間・時間がかかってしまったというケースはよくあります。
 また、「相続争い」の主な原因となる相続人同士の話し合いの余地を少なくする点からも、ご自身にある程度の財産がある場合には、遺留分等に配慮した適切な遺言書をつくられることをお勧めいたします。


→ (次のページ) 02.財産が少なければ遺言は必要ないか?


ご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

☎078-959-5750 担当:三入(さんにゅう)



サブコンテンツ

広告欄

このページの先頭へ