04.遺言の方式① ~ 自筆証書遺言

 遺言には厳格な方式が定められており、その方式に従わない遺言は無効になります(民法960条)。「あの人は生前こう言っていた。」などの伝聞はもちろん、録音テープやビデオに残された言葉も、遺言としては、法律上の効力がありません。

[民法]
(遺言の方式)
第960条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。

 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つの方式が定められています。


自筆証書遺言の形式

 自筆証書遺言とは、遺言者が「全文」「日付」「氏名」を自書して「押印」すること、により作成する遺言です(民法968条)。

[民法]
(自筆証書遺言)
第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を
 自書し、これに印を押さなければならない。
② 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997
 条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の
 目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場
 合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場
 合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
③ 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所
 を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所
 に印を押さなければ、その効力を生じない。



 遺言者に意思能力があり、満15歳以上であれば1人で作成でき(民法961~963条)、費用もかからず,証人も必要ありません

[民法]
(遺言能力)
第961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。
第962条 第5条、第9条、第13条及び第17条の規定は、遺言については、適用しな
 い。

第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。


 遺言書の用紙や筆記用具については特に定めはありませんが、全文(日付・氏名を含む)を本人自らが書く必要があります(民法968条1項)。
 ただし、自筆証書遺言と一体のものとして、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録については自署する必要はなく、ワープロで作成してもよいとされています。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければなりません(民法968条2項)。

 日付は特定できる記載であれば、例えば「平成31年の誕生日」という記載でもかまいませんが、「平成31年4月吉日」という記載は認められず、遺言は無効になってしまいます。日付印等の使用も認められません。

 
押印は認印でも構いませんが、後日の紛争を避けるため実印が無難でしょう。印鑑登録証明書を遺言書といっしょに保管すると、遺言書の信憑性が高まります。
 
必ずしも封書にする必要はありませんが、する場合は表に「遺言書」と記載し、「遺言書の開封は家庭裁判所に提出して行わなければならない」と書いておきましょう。


自筆証書遺言
の訂正

 自筆証書遺言の訂正には、厳格な基準があります(民法968条3項)。
 
文字の加入はその部分に直接記入し、削除した上で変更する場合は、訂正前の内容が読めるよう2本線を引き、その付近に訂正文言を記載します。いずれも、変更した場所に遺言書と同じ印で押印し、欄外などに「第1条7行目」というように変更した場所を指示し、「何字加入何字削除」というように変更した内容を付記して署名します。かなりややこしいので、訂正箇所が多い場合には、書き直した方がよいでしょう。
 
なお、本人以外の人が遺言書の訂正をすると、遺言書の偽造・変造として、その相続については欠格者となってしまいます(民法891条5号)。
( → 相続・遺産分割の基礎知識08.相続人になれない人 ~ 相続欠格・廃除


相続開始後の手続 

 遺言者が亡くなった後、遺言書の保管者または発見した相続人は、すみやかに遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」(遺言の存在・内容を確認する手続)を請求する必要があります(1004条1項)。また、封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人または代理人の立会いの上開封しなければならないことになっています(民法1004条3項)。
 
遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、または家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処せられる場合があります(1005条)。


→ (次のページ) 06.検認(遺言の存在および内容を確認する手続)
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