01.相続人になる人とその相続分
被相続人(亡くなった人)が、遺言で自分の財産を死後どうするのかについて生前の考えを表していない場合、民法で定められた相続人が、財産を相続できる割合(法定相続分)に従って相続することになります。
まず、被相続人の配偶者(夫もしくは妻)は常に相続人になります(配偶者相続、民法890条)。
[民法]
(配偶者の相続権)
第890条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又
は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
内縁関係の相手は対象外です。ただし、内縁配偶者であっても、実質的には配偶者に準ずるものとして、居住権等の保護を受けることができる場合もあります。( → 03.内縁関係の相手の居住権の保護)
配偶者以外の方が相続人となる場合(血族相続)には優先順位があり、どの順位の相続人がいるかによって、配偶者の相続分が変わってきます(民法900条)。
[民法]
(法定相続分)
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるとこ
ろによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二
分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二と
し、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三と
し、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいもの
とする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方
を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
第1順位:直系卑属(子・孫)
[民法]
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条 被相続人の子は、相続人となる。
② 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当
し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代
襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
③ 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当
し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
まず、子(養子も含む)が相続人になります(民法887条1項)。胎児も、死産でない限り相続人になります(民法886条)。再婚相手の連れ子は、養子縁組をしない限り、相続人にはなりません。
[民法]
(相続に関する胎児の権利能力)
第886条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
② 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
この場合、配偶者が相続財産の2分の1を取得し、残りの2分の1を子全員で均等に相続します(民法900条1・4号)。
非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子、婚外子)の法定相続分について、従来は嫡出子(婚姻関係にある男女の間に生まれた子、婚内子)の法定相続分の2分の1とされていましたが、平成25年9月5日以後に開始した相続については、非嫡出子についても嫡出子と平等に相続分が認められます。( → 04.非嫡出子の法定相続分)
子が亡くなっている場合には、孫が相続人になります(代襲相続、 民法887条2項)。孫も亡くなっている場合には、ひ孫が相続人になります(再代襲相続、民法887条3項)。代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者の相続分を均等に分けます(民法901条1項但書)。
[民法]
(代襲相続人の相続分)
第901条 第887条第2項又は第3項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、
その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人
あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規
定に従ってその相続分を定める。
② 前項の規定は、第889条第2項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合に
ついて準用する。
代襲相続するためには「被相続人の直系卑属」である必要があります(887条2項但書)。例えば、養子縁組をした養子に縁組「前」に生まれた子(いわゆる連れ子)がいる場合、養親にとって連れ子は直系卑属にあたらないため、連れ子は代襲相続しません。
これは、「養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」ので(民法727条)、縁組「後」に養子の子が生まれた場合は養子の子と養親に親族関係は生じますが、縁組「前」に既に生まれていた養子の子と養親には親族関係が生じないからです。したがって、養子縁組「後」に生まれた養子の子は、養子が死亡していた場合、養親を代襲相続します。
第2順位:直系尊属(親・祖父母)
[民法]
(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)
第889条 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない
場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にす
る。
二 被相続人の兄弟姉妹
② 第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
第1順位の子・孫がいない場合に限り、被相続人の親が相続人になります(民法889条1項1号)。
この場合、配偶者が相続財産の3分の2を取得し、残りの3分の1を両親が均等に相続します(6分の1ずつ)。親が1人の場合は3分の1の全部を相続し、親が亡くなっていて祖父母が存命の場合は、祖父母が3分の1を相続します。
第3順位:兄弟姉妹
第1順位・第2順位の子・孫・両親・祖父母等がいない場合に限り、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります(民法889条1項2号)。
この場合、配偶者が相続財産の4分の3を取得し、残りの4分の1を兄弟姉妹が均等に相続します。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の半分となります(民法900条4号但書)。
兄弟姉妹が亡くなっている場合には、その子(甥・姪)が相続人になります(代襲相続、民法889条2項・887条2項)。
ただし、第1順位のひ孫が再代襲相続によって相続人となるのとは異なり、甥・姪の子は相続人にはなりません(民法889条2項が887条2項のみを準用し、3項を準用していないため)。
配偶者がいない場合
配偶者がいない場合は、優先する順位の相続人がすべての財産を均等に分けます。
→ (次のページ) 02.配偶者の相続分
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