03.遺言の必要性が特に強い場合

夫婦間に子供がいない場合

 子や親がいない場合、法定相続分に従うと、配偶者が4分の3、被相続人の兄弟姉妹が4分の1の各割合になります(民法900条3号)。
 しかし実際には、自分の死後に兄弟姉妹に財産を与えようとは考えていない場合が多いでしょう。
 このような場合に、すべての財産を配偶者に相続させる遺言をすれば、被相続人の兄弟姉妹は遺留分がないため(民法1028条)、財産分与の主張はできません。

[民法]
(法定相続分)
第900条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるとこ
 ろによる。

 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二
  分の一とする。

 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二と
  し、直系尊属の相続分は、三分の一とする。

 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三と
  し、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。

 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいもの
  とする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方
  を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。


(遺留分の帰属及びその割合)
第1028条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じ
 てそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
 一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
 二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一


お世話になっている人に財産を残したいとき

 相続人の中で被相続人の介護をした人がいるような場合、「寄与分」はなかなか認められにくいため、他の相続人と差をつけたい場合には、その旨を遺言する必要があります。
 また、子供が死亡後、その妻が亡夫の親の世話をしている場合など、子供の妻にも財産を残してあげたいことがあると思いますが、「子の配偶者」は相続人ではないので、遺言で財産を遺贈する旨定めておかないと、相続人以外の者は何ももらえません。


内縁の夫婦

 長年事実上の夫婦として連れ添ってきても、婚姻届けを出していない場合には、いわゆる内縁の夫婦となり、内縁関係の相手には相続権がありません。
 したがって、内縁関係の相手に財産を残す場合には、必ず遺言をしておかなければなりません。


個人事業主

 個人で事業を経営していたり、農業をしている場合などは、その事業等の財産的基礎を複数の相続人に分割してしまうと、事業の継続が困難となります。このような事態を招くことを避け、家業等を特定の者に承継させたい場合には,その旨をきちんと遺言をしておかなければなりません。


相続人がいない場合

 相続人がいない場合には、特別な事情がない限り、遺産は国庫に帰属します(民法951~959条)。
 したがって、特別世話になった人に贈与したいとか、お寺や教会、社会福祉関係の団体、自然保護団体、あるいは、ご自分が有意義と感じる各種の研究機関等に寄付したいなどと思われる場合には、その旨の遺言をしておく必要があります。

 上記の各場合のほか、家を今一緒に住んでいる子に単独で譲りたい、障害を持っている子に多く相続させたい、孫に財産を残したい、のように、遺言者それぞれの状況に応じた最適な形で財産承継をさせたい場合には,遺言をしておく必要があります。


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