12.被相続人(亡くなった人)が、連帯保証人となっていた場合の注意点

 被相続人(亡くなった人)に、債務(借金)がある場合の注意点 で、被相続人に借金がある場合についてみましたが、被相続人が連帯保証人となっていた場合も注意が必要です。連帯保証人になっていた方が亡くなれば、連帯保証債務も相続されるからです。


連帯保証とは

 連帯保証の他に単なる保証の制度もあるのですが、通常「保証人」になる場合は、ほとんどが連帯保証の場合です。
 
連帯保証という制度は、単なる保証と比較してみると、その怖さがよく分かります。

 まず、
単なる保証には、主債務者(保証された人)が破産もしておらず、また行方不明にもなっていないのに、債権者が主債務者ではなく保証人に請求してきた場合、「まず、保証人である自分ではなく主債務者に請求してください」といえる「催告の抗弁(民法452条)」という制度がありますが、連帯保証人にはこれが認められません(民法454条)。つまり、債権者は主債務者より先に連帯保証人に支払いを請求でき、連帯保証人はこれを拒むことはできないのです。
 
また、単なる保証には、主債務者に財産がありそこから回収ができそうなことを保証人が示して「まず、主債務者の資産から回収してください」といえる「検索の抗弁(民法453条)」という制度もありますが、連帯保証人にはこれも認められません(民法454条)。つまり、主債務者に資産があっても、債権者は連帯保証人の資産から回収できるのです。

[民法]
(催告の抗弁)
第452条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債
 務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続
 開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

(検索の抗弁)
第453条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証
 人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明し
 たときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならな
 い。

(連帯保証の場合の特則)
第454条 保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利
 を有しない。

(催告の抗弁及び検索の抗弁の効果)
第455条 第452条又は第453条の規定により保証人の請求又は証明があったに
 もかかわらず、債権者が催告又は執行をすることを怠ったために主たる債務者から
 全部の弁済を得られなかったときは、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をす
 れば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる。


 さらに、保証人が数人いる場合、単なる保証では「分別の利益(民法456・427条)」といって、各保証人は債務を人数分で割った分だけを保証すればよいのですが、連帯保証人にはこれも認められません。
 つまり、債権者は、
連帯保証人が何人いようとも、債権回収しやすそうな連帯保証人から全額を回収できるのです。支払った連帯保証人は、他の連帯保証人に対して求償できるにとどまります。

[民法]
(数人の保証人がある場合)
第456条 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を
 負担したときであっても、第427条の規定を適用する。

(分割債権及び分割債務)
第427条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないとき
 は、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負
 う。


 このように連帯保証人は、主債務者本人とほぼ同じ責任を負うといえるのです。


連帯保証の相続を避けるには 

 連帯保証債務の相続を避けるためには、相続放棄をする必要があります(民法938条)。
 相続放棄をすると、その相続に関しては、「初めから相続人とならなかったものとみな」されるので(民法939条)、連帯保証債務も相続しないで済むのです。

[民法]
(相続の放棄の方式)
第938条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければな
 らない。


(相続の放棄の効力)
第939条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなか
 ったものとみなす。


 
ただし、相続放棄をするには、相続開始時から3か月以内に家庭裁判所に対して申請をする、ことが必要です(民法915条)。この期間内に被相続人が生前、連帯保証人になっていたことに気づけばよいのですが、主債務者(保証された人)が支払いを続けている限り、通常は連帯保証人には請求されないので、気づかずに3か月を過ぎてしまう恐れもあります。その後に主債務者が借金を返せなくなり、債権者が相続人に対して連帯保証債務を請求してきても、相続放棄ができないため連帯保証責任を負うことになってしまいそうです。

[民法]
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第915条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以
 内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。
 ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において
 伸長することができる。
② 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができ
 る。


 
この点、「3か月」の期間の始期は、被相続人の死亡など相続開始の原因となる事実、および、それによって自分が相続人となったことを知った時、とされています。
 しかし、例外的に、相続人が相続財産が全く存在しないと信じるについて相当な理由があれば「相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識できる時 」とされています (最判昭59.4.27)。
 
つまり、被相続人が死亡して3か月を経過してしまっても、その後に初めて被相続人が連帯保証人になっていたことを知った場合には、知った時から3か月以内であれば相続放棄が認められる可能性はあります。
 
ただし、必ず相続放棄が認められるとは限りませんし、相続放棄をすると被相続人の貯金や土地等、プラスの財産まで全て放棄することになるので、まずは管轄の家庭裁判所に相談するとよいでしょう。


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