05.相続分の修正① ~ 寄与分
寄与分とは
相続人のなかに、被相続人の事業を手伝ったり、被相続人を介護した人がいる場合、法定相続分どおりに遺産を分けるのでは不公平な結果となることもあります。
そこで、その相続人の貢献度を金銭的に換算し、その相続人が特別に受け取る制度が「寄与分」です(民法904条の2)。
[民法]
(寄与分)
第904条の2 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給
付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につい
て特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産
の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産と
みなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた
額をもってその者の相続分とする。
② 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所
は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続
財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
③ 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を
控除した残額を超えることができない。
④ 第2項の請求は、第907条第2項の規定による請求があった場合又は第910条に規
定する場合にすることができる。
寄与分がある場合の相続分の求め方
寄与分がある場合の相続分の求め方は、まず「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」から寄与分を引いた分を相続財産とみなし、法定(指定)相続分どおりに分けます。そして、寄与分を貢献した人の相続分に加算します。
〈例〉相続開始時の財産価額 … 2000万円
相続人 … 妻・子供A・子供B
寄与分 … 子供Aに400万円
①相続開始時の財産価額から寄与分をマイナスした分を法定相続分どおりに分ける
2000万円 - 400万円(寄与分) = 1600万円(みなし相続財産)
配偶者 … 1600万円 × 1/2 = 800万円
子供A … 1600万円 × 1/2 × 1/2 = 400万円
子供B … 1600万円 × 1/2 × 1/2 = 400万円
②寄与分を子供Aにプラスする
子供Aの相続分 … 400万円 + 400万円(寄与分) = 800万円
子供Bの相続分 … 400万円
配偶者の相続分 … 800万円
寄与分が認められる基準
寄与分が認められるには、被相続人の営んでいた事業にほとんど無給で従事したり、資金を提供したり、または、長期間にわたり被相続人の療養看護をしたため付添人の雇い費用を免れた、など「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」場合に限られます。
寄与分が認められるハードルは高く、他の相続人に比べてかなりの犠牲を払った場合に限られます。
寄与分は相続人間の「協議」で決めますが、合意できない場合は、家庭裁判所に請求して決めてもらうことになります。
寄与分はあくまでも「相続人」に認められるものですので、被相続人の子の配偶者・内縁関係の相手など「相続人」でない人は、どんなに被相続人に貢献していようと寄与分は認められません。
ですから、お世話になっている人に財産を残したいのであれば、遺言によって財産を相続させる(遺贈する)のが確実な方法になります。
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