07.相続分の最低保障 ~ 遺留分

遺留分とは

 本来、被相続人が生前所有していた財産は、遺言によって自由に処分することができます。しかし、遺言がすべての財産を1人の相続人や相続人以外の人に相続させるといった内容の場合では、配偶者・子・父母など一定の相続人に,相続において取得することが保障されている遺産の最低限の割合、すなわち「遺留分」が定められています。


遺留分権利者とその割合

 遺留分を有する相続人は、配偶者・直系卑属(子・孫)・直系尊属(父母)に限られ、兄弟姉妹には遺留分はありません

 
遺留分権利者全員に保障される相続財産の割合は、
①相続人が父母など直系尊属のみの場合は相続財産の3分の1、
②相続人に配偶者や子供が含まれる場合は相続財産の2分の1、
です(民法1028条)。

[民法]
(遺留分の帰属及びその割合)
第1028条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じ
 てそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
 一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
 二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

 遺留分権利者が複数の場合、遺留分権利者全員に保障される相続財産を、法定相続分に従って配分します。
 例えば、相続人が配偶者と子2人である場合には、遺留分全体は相続財産の2分の1ですので、各人の遺留分は、法定相続分が2分の1である配偶者は相続財産の4分の1、法定相続分が4分の1ずつである子はそれぞれ8分の1ずつとなります。


遺留分算定の基礎となる財産

 遺留分は、相続開始時の財産に、相続開始前1年間に贈与した財産や1年前でも遺留分を侵害することを知って行った贈与、相続人が以前に受けていた特別受益分を含めた額から、借金など債務の全額を除いて計算します(民法1029・1030・1044・903・904条)。

[民法]
(遺留分の算定)
第1029条 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈
 与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。
② 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の
 評価に従って、その価格を定める。
第1030条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその
 価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をし
 たときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

(代襲相続及び相続分の規定の準用)
第1044条 第887条第2項及び第3項、第900条、第901条、第903条並びに第904条
 の規定は、遺留分について準用する。


(特別受益者の相続分)
903 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組
 のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開
 始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみな
 し、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し
 た残額をもってその者の相続分とする。
② 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺
 者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
③ 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺
 留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
第904条 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財
 産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時において
 なお原状のままであるものとみなしてこれを定める。



遺留分の計算例

〈例〉被相続人が配偶者・子供A・子供Bの3人のうち、長男Aにすべての財産
   (4000万円)を相続させるという遺言をした場合

 遺留分総額   … 4000万円 × 1/2 = 2000万円

 
配偶者の遺留分 … 2000万円 × 1/2 = 1000万円
 
Bの遺留分   … 2000万円 × 1/4 =   500万円


遺留分の主張方法

 遺留分を主張するには、遺留分を侵害する割合の財産を受けた者に対し、内容証明郵便などで不動産や金銭などの返還を請求(遺留分減殺請求)します(民法1031条)。
 この請求が相手方に届いた時点で、遺留分を侵害している遺贈または贈与の効果が失われます。あとは話し合いで、場合によっては調停や訴訟で、遺留分に見合う遺産を現実に取り戻すことになります。

(遺贈又は贈与の減殺請求)

第1031条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、
 遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。


 「遺留分減殺請求」ができるのは、相続開始および贈与・遺贈があったことを知った時から1年以内です(民法1042条)。具体的には、遺言書の内容を知った時などから起算します。また、相続があったことすら知らなくても、10年たってしまうと請求はできなくなります。

(減殺請求権の期間の制限)
第1042条 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は
 遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅す
 る。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。



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