06.相続分の修正② ~ 特別受益
特別受益とは
相続人のなかに、生前に被相続人から住宅資金や事業資金、大学進学のための学費といった援助を受けていたり、遺言によって財産をもらった(遺贈を受けた)人がいる場合、法定相続分どおりに遺産を分けるのでは不公平な結果となることもあります。
そこで、その相続人が遺産分割において受けるべき財産の前渡しを受けていたものとして扱う制度が「特別受益」です(民法903条)。
[民法]
(特別受益者の相続分)
第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組
のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開
始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみな
し、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し
た残額をもってその者の相続分とする。
② 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺
者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
③ 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺
留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。
第904条 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財
産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時において
なお原状のままであるものとみなしてこれを定める。
特別受益がある場合の相続分の求め方
特別受益がある場合の相続分の求め方は、まず「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」に特別受益分を足した分を相続財産とみなし、法定(指定)相続分どおりに分けます。そして、特別受益分を受けた人の相続分から引きます。
〈例〉相続開始時の財産価額 … 2000万円
相続人 … 妻・子供A・子供B
特別受益分 … 子供Aに400万円
①相続開始時の財産価額に特別受益分をプラスした分を法定相続分どおりに分ける
2000万円 + 400万円(特別受益分) = 2400万円(みなし相続財産)
配偶者 … 2400万円 × 1/2 = 1200万円
子供A … 2400万円 × 1/2 × 1/2 = 600万円
子供B … 2400万円 × 1/2 × 1/2 = 600万円
②特別受益分を子供Aからマイナスする
子供Aの相続分 … 600万円 - 400万円(特別受益分) = 200万円
子供Bの相続分 … 600万円
配偶者の相続分 … 1200万円
生命保険金の受取は、特別受益になるか?
生命保険金の受取人となった相続人は、特別受益を受けたことになるのでしょうか?
この点、生命保険金は保険契約に基づいて保険金受取人が自己固有の権利として取得するので、保険金受取人が相続人である場合でも遺産分割の対象にはならず(※)、生命保険金は特別受益にあたらないのが原則です。
ただし、最近の裁判例では、原則として特別受益には当たらないとしつつ、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が著しい場合には、特別受益に準じるとしています(最決平成16.10.29)。
(※)相続税を計算するときには、「みなし相続財産」として相続税の対象となります。
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タグ:相続・遺産分割の基礎知識