08.相続人になれない人 ~ 相続欠格・廃除
相続人の資格があっても、民法に掲げられている「欠格事由」に該当する人は相続人になれません(相続欠格、民法891条)。
欠格事由は以下の通りです。
①被相続人や他の相続人を故意に殺害したり、殺害しようとしたために刑に処せられ
た
②被相続人が殺害されたことを知りながら、告訴・告発しなかった
③詐欺・強迫によって、被相続人が遺言書を書いたり、取消・変更することを妨害した
④詐欺・強迫によって、被相続人に遺言書を書かせたり、取消・変更させた
⑤遺言書を偽造・変造したり、破棄・隠匿した
また、遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)に、
①被相続人に対する虐待
②被相続人に対する重大な侮辱
③その他の著しい非行があったとき
など、被相続人がその者に財産を相続させたくないのももっともだと思われるような事由がある場合に、被相続人が家庭裁判所にその相続人の資格の剥奪を請求することができます(相続人の廃除、民法892条)。
廃除は遺言でもできます(民法893条)。廃除したとしても、それを取消すこともできます(894条)。
遺留分を有する相続人(兄弟姉妹以外の相続人)に財産を相続させたくない場合は、相続人が相続放棄しない限り、廃除するしか方法がありません。ただし、欠格・廃除によって相続権を失った場合でも、その効果は本人に限られるため、亡くなっている場合と同じく、子や孫が代襲相続します(民法887条)。
[民法]
(相続人の欠格事由)
第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに
至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった
者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しく
は直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消
し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り
消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
(推定相続人の廃除)
第892条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者を
いう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を
加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、
その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(遺言による推定相続人の廃除)
第893条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行
者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所
に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続
人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
(推定相続人の廃除の取消し)
第894条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求す
ることができる。
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条 被相続人の子は、相続人となる。
② 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当
し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲
して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
③ 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当
し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
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